野球しているんだけど、右打ちでバッティングするときに左手が痛い。
ということで、当院に相談に来られた方がいらっしゃいます。
じつは、数カ月前から痛かったみたいで、前の病院ではレントゲンで異常はないと言われていたのだそうです。
確かに、ルーチンでとる手関節の正面と側面のレントゲン写真では、はっきりとした異常はありませんでした。
疼痛部位と受傷起点から、ある骨折を疑い、別の角度から撮影してみると…
やっぱりありました。
有鉤骨鉤骨折です。
有鉤骨は、手関節を構成する8つの手根骨と呼ばれる骨の中の1つです。
そして、この骨には、有鉤骨鉤と呼ばれる突起が存在し、その部分が折れてしまうことが有鉤骨鉤骨折なんです。
野球のバットやゴルフのクラブ、テニスのラケットやバイクのハンドルなどを握るとちょうど同部位にあたります。
握った状態で強い衝撃がかかり1回で骨折することもあれば(例えばゴルフで強くダフってしまうとか)、野球やゴルフ、テニスのスイング動作の繰り返しにより疲労骨折することもあります。
スポーツに限らず、日常生活でも転倒した際に手のひらをついて受傷することもあります。
痛みの程度は様々ですが、痛みで握る動作に支障をきたします。
その他の診察所見としては、手関節を尺屈位(小指側に手首を捻る)で薬指と小指に抵抗を加えて屈曲させるhook of hamate pull off testと呼ばれるテストを行い、有鉤骨鉤に負荷をかけると痛みが出現します。
時間がたってもなかなか骨がつながらない偽関節とよばれる状態になると、痛み以外にも近くを通る尺骨神経が刺激を受けて小指側がしびれたり、すぐ横を通る小指を曲げる腱が断裂することもあります。
治療としては、手首を4〜6週程固定して骨がつながるのを待つこともあります。
手術では、スクリューで固定する方法や骨折した骨の一部を摘出する方法があります。
偽関節となってしまったとき、くっつくみこみがないので骨片を摘出します。
早期スポーツ復帰を希望される方も骨片を摘出することが多いです。